こんにちは!くじらパパです。
今回は発達障害と遺伝の関係について話してみたいと思います。
遺伝のことは患者さんやその家族からもよく聞かれる質問ですが、科学の進歩とともにある程度その関係が分かるようになってきました。
そこで現在分かっている、両者の関係について分かりやすく説明してみようと思います。
今回の記事は、以下の人にお勧め。
- 発達障害に遺伝は関係あるの?
- 親が発達障害だと子供の発達障害になるの?
- 遺伝に以外の原因は分かっているの?
現在分かっていること
現在、発達障害の遺伝の分野で分かっていることがいくつかあります。
①発達障害の原因には、遺伝の影響がある程度関わっている
これは、双子の研究から分かってきました。
一卵性双生児の場合、一方が自閉症であれば、もう片方が自閉症である可能性は60~90%と言われてます。
この数値は明らかに遺伝が自閉症の有無に影響を与えていること指しています。
ですが、逆に言うと10~40%は遺伝の影響を受けないことも分かり、遺伝以外の原因があることも指しています。
また、これはあくまで一卵性双生児がお互い自閉症になる確率であって、親から子供に受け継がれる可能性が60~90%ではないということは注意してください。
②両親が発達障害であれば子供も発達障害を持って生まれてくる可能性は高まるが、絶対になるわけではない。
この様な遺伝形式をとる病気は、他にも糖尿病・高血圧・喘息・花粉症などがあります。
例えば、「親が糖尿病であれば子供も絶対に糖尿病になるか?」と言われたら、そんなことはないことを皆さんも感覚的に理解できるのではないでしょうか。
逆に、両親が糖尿病でなくても、子供が糖尿病になる可能性もあります。
発達障害も、これに似た遺伝の傾向を持っています。
この様な遺伝形式を「多因子遺伝」と言い、障害が発症するかどうかを決める遺伝子は、ひとつではないことが知られています。
多因子遺伝は、複数の関連する遺伝子をどの程度受け継ぐかによって表れ方に違いが生まれ、確率的な出現の仕方をする遺伝形式です。
実際に、発達障害の遺伝子研究では100種類以上の遺伝子が、自閉症の発症に関わっていることが明らかになっています。
③遺伝以外にも、環境要因の影響を受ける。
糖尿病が運動・食事・生活習慣など環境要因が組み合わさって影響している様に、発達障害も環境の影響を受けていると考えられています。
現在可能性として考えられているのは
- 妊娠初期の喫煙
- 乳幼児期の特定の栄養素の不足
- 出産時の親の年齢
- 体外受精などの不妊治療
などがあげれらます。愛情不足はこの中には含まれていません。
ただし、これらもあくまでリスクを高めるというもので、絶対に発達障害になるというものではないことに注意してください。
遺伝との向き合い方
発達障害と遺伝の関係は確かにありますが、大事なのは正しく恐れることです。
遺伝子の研究分野は発展していますが、現時点ではそれを応用して治療や診断をするところまで科学は進歩していません。つまり、分かっていても何ともしようがない現状があります。
個人の努力でできることといえば、環境要因を避けることですが、それでも発達障害であることが避けられないこともあり、人間の意思では完全にコントロールすることができないと理解する必要があります。
また、遺伝の問題はよく家族の間で起こります。
例えば、「○○が発達障害なのは、親が発達障害だから」の様に原因を遺伝に求めることがあります。
ですが、その親もその遺伝子は与えられたものであり、リスク自体を自分でコントロールすることができません。
さらに、どんな人でも多かれ少なかれ多因子遺伝的な素因は持っており、確率的に決まった結果に過ぎないのです。
「糖尿病になったのは、親が糖尿病だから」と考えたとしても、それ自体が問題の解決にはつながらないのと同様に、発達障害でも原因を遺伝に追及しても困っていることは減りません。
発達障害の関わりで重要なのは、原因追及よりも、どうすれば生きづらさを減らせるかの対処の仕方ということになります。
まとめ
今回は発達障害と遺伝の関係について説明してみました。
ポイントは!
①発達障害の原因には、遺伝の影響がある程度関わっている
②両親が発達障害であれば子供も発達障害を持って生まれてくる可能性は高かまるが、絶対になるわけではない。
③遺伝以外にも、環境要因の影響を受ける。
発達障害を考える時には、遺伝的原因追及にとらわれ過ぎず、どうすれば生きづらさを減らせるかを考えるようにしましょう。